「添い寝」は、 英語でcosleeping(一緒に寝ること) またはbed sharing(同じベッドで寝ること) と言います。
赤ちゃんと添い寝で授乳する「添え乳」は、赤ちゃんを寝かせつけるときや 夜中に 授乳するときに便利 だと聞く一方で、赤ちゃんと添い寝をすると乳幼児突然死症候群(SIDS)になる可能性が高くなるので避けた方がよいと言う話も聞くかもしれません。
添い寝と乳幼児突然死症候群(SIDS)の関係については議論が続いており、添い寝がSIDSの危険因子だとする研究もあれば、SIDSの発生率が低いアジアでは親が赤ちゃんと添い寝することが多いので、添い寝はSIDSを防ぐ効果があるという研究もあります。
アメリカと日本での乳幼児突然死症候群(SIDS)と添い寝に関する研究の経緯を調べてみました。
1997年にアメリカ小児学会は「添い寝は SIDSの危険因子になるか」という声明を発表しました。詳細はこちら。
この声明では、「添い寝が SIDSを減らす要因になるという研究データはなく、むしろ特定の状況下ではSIDSが増える」と 書かれています。
一方、同じ年にノートルダム大学の ジェイムス・マッケーナ人類学教授は、「添い寝は母乳育児を促進する」と題する研究発表の中で、添い寝すると母乳育児の回数が増え、母乳育児期間が長くなること、添い寝することで SIDSをある程度予防する可能性があると述べています。詳細はこちら。
1999年には、米国消費製品安全委員会(US Consumer Product Safety Commission)が、「8年間で、2歳以下の515名の赤ちゃんが親とベッドを共有して死亡した。この中で親や兄弟が 赤ちゃんに覆い被さって赤ちゃんが窒息した事例が121件、ベッドにはさまった例が394件ある。」と発表しました。詳細はこちら。
これを受けて、前出の ジェイムス・マッケーナ教授は「親が赤ちゃんとベッドを共有するか否かは、製品の安全問題とは異なる」と題して、 ベッド自体の構造や、親が覆い被さる場合の親の健康状態、同じベッドに寝ることの危険性と並んで赤ちゃんと ベッドを共有することの利点についても更に研究が必要だと 発表しました。詳細はこちら。
その後、アメリカ小児学会は、SIDSを予防するための乳児の睡眠環境に関するガイドラインを発表しています。2011年に発表された改訂ガイドラインには次のように書かれています。(以下、著者の概訳です。原文はこちら。)
「赤ちゃんを仰向けで寝かすこと(著者注:アメリカでは、『Back to sleep(眠るときは仰向けで)』というキャンペーンを続けています。)、赤ちゃんを適切な環境で寝かすこと(赤ちゃん用に設計された安全なベッドを使う。固いマットレスを使用する。柔らかい枕やおもちゃをおかない。 毛布やシーツ をピンと張った状態以外で使わない 。クリブバンパーを使わない。頭を覆うような寝間着を着せない。)、妊娠中および産後にたばこ・アルコールやドラッグを喫しない。
母乳育児はSIDSのリスクを下げる。完全母乳は最もSIDSの予防効果がある。」
添い寝については、今回のテーマなので、少し細かく訳してみます。
「 添い寝でSIDSを予防できるという十分な研究がなく、また添い寝するときの一部の危険因子(例えば親の疲れ)を排除できないため、アメリカ小児学会では添い寝を推奨しない。
親と同室で赤ちゃん専用ベッドに寝かせると、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生が半減し、窒息したりベッドとフレームの間にはさまることを予防できる。(筆者注:このガイドラインでは、赤ちゃんを親と同室で寝かせることを推奨しています。)
『親と同一ベッドで安全に添い寝するため』と称した商品(例えばコスリーパー)は、推奨しない。親のベッドで授乳するのはよいが、親が眠る前に赤ちゃん用のベッドにうつすこと。ソファーや肘掛け椅子は、SIDS発生率が特に高いため、親がそのまま眠りそうなときには、ソファーや肘掛け椅子で授乳しない。
次の場合、添い寝をするべきではない。
赤ちゃんが生後3ヶ月以下である。親が喫煙している、または母親が妊娠中喫煙していた。親が極度に疲労している。眠気を誘う薬やアルコールを摂取した。兄弟など親以外と同一ベッドで寝る。やわらかい表面(ウォーターベッドやソファ)ややわらかいもの(枕、思い毛布など)がおいてある。」
上記ガイドラインは、10ページにわたって書かれています。研究で危険因子と言われているものを羅列し、すべて排除するように書かれているような印象を受けました。 危険因子というのは、特定の疾患の発生に関係がある事象を指しますが、危険因子があるからといって必ず疾患が発生するとは限りません。
添い寝についても、「親の疲れといった危険因子を排除できないため推奨しない」と書かれています。では、添い寝をするときにSIDSの危険因子を減らすためのガイドラインはないのでしょうか。
前出のノートルダム大学マッケーナ教授は、『母と子の行動学的睡眠研究所』というサイトで、添い寝に関する科学的データや安全な添い寝のためのガイドラインを紹介しています。ガイドラインには、床にマットレスをおき、お父さん、お母さん、赤ちゃんの順に並んで眠っている絵が描かれ、次のような具体的なガイドラインが記されています。サイトはこちら。
• 赤ちゃんが健康な満期産であり受動喫煙していない。
• ベッドを共有する親全員が添い寝について理解、納得し、責任を負える。
• 母乳育児をしている。
• 赤ちゃんが仰向けで固いマットレスの上で寝る。頭は決して覆わない。
• 枕や柔らかいおもちゃなどを周りにおかない。
• やわらかい布やビーンバッグマットレスを使わない。
• ウォーターベッドを避ける。
• ソファーで寝ない。
• 哺乳瓶で授乳している赤ちゃんは別ベッドで寝る。
• 1歳以下の赤ちゃんは兄弟とベッドを共有しない。
• 薬やアルコールなどを喫して眠気を感じている親は同じベッドで寝ない。
• 母親の髪が特に長い場合、赤ちゃんの首に巻き付かないよう束ねて眠る。
• 肥満で赤ちゃんにどれだけ近いか分からない場合は、同じベッドで寝ない。
日本では、厚生労働省が1999年から毎年11月を「乳幼児突然死症候群」対策強化月間と定め小児学会などを通じて普及啓蒙活動を強化しています。11月を強化月間と定めたのは、12月以降の冬期に乳幼児突然死症候群(SIDS)が発生する傾向が高いためです。SIDSの発生リスクを下げるために、(1)あおむけ寝、(2)母乳哺育、(3)保護者等の禁煙 を呼びかけています。
2010年の強化月間呼びかけはこちら。
日本では、添い寝に関しては一切言及していません。
また、ボランティアグループ『NPO法人SIDS家族の会』は、SIDSやその他の病気、流産、死産などで赤ちゃんを亡くした両親を精神的な面から援助し、SIDSに関する情報提供をしています。SIDSの危険因子やSIDSを少なくするための記述もあります。ベッドの共有については、赤ちゃんと添い寝することがSIDSの危険因子となる研究もあるが、データからソファーでの死亡事例を差し引くと親のベッドに赤ちゃんを寝かせることは統計的には危険因子とならないと紹介しています。
サイトはこちら。
『母と子の行動学的睡眠研究所』にある添い寝のためのガイドラインの最後に、「すべての選択肢について考慮し、理解した上で、家族に最もあった方法を選ぶことをお勧めします」と書いてあります。お母さん、パートナー、兄弟それぞれの考え方や環境などにより、最善の方法は異なるでしょう。また、家族全員の睡眠時間が最も長くなるのが、その家族にあった睡眠環境だという考え方もあります。
皆様もいろいろな選択肢を知った上で、ご家族にあった寝かたをお試し下さい。皆様のご意見や経験談をお聞かせください。
赤ちゃんと添い寝で授乳する「添え乳」は、赤ちゃんを寝かせつけるときや 夜中に 授乳するときに便利 だと聞く一方で、赤ちゃんと添い寝をすると乳幼児突然死症候群(SIDS)になる可能性が高くなるので避けた方がよいと言う話も聞くかもしれません。
添い寝と乳幼児突然死症候群(SIDS)の関係については議論が続いており、添い寝がSIDSの危険因子だとする研究もあれば、SIDSの発生率が低いアジアでは親が赤ちゃんと添い寝することが多いので、添い寝はSIDSを防ぐ効果があるという研究もあります。
アメリカと日本での乳幼児突然死症候群(SIDS)と添い寝に関する研究の経緯を調べてみました。
1997年にアメリカ小児学会は「添い寝は SIDSの危険因子になるか」という声明を発表しました。詳細はこちら。
この声明では、「添い寝が SIDSを減らす要因になるという研究データはなく、むしろ特定の状況下ではSIDSが増える」と 書かれています。
一方、同じ年にノートルダム大学の ジェイムス・マッケーナ人類学教授は、「添い寝は母乳育児を促進する」と題する研究発表の中で、添い寝すると母乳育児の回数が増え、母乳育児期間が長くなること、添い寝することで SIDSをある程度予防する可能性があると述べています。詳細はこちら。
1999年には、米国消費製品安全委員会(US Consumer Product Safety Commission)が、「8年間で、2歳以下の515名の赤ちゃんが親とベッドを共有して死亡した。この中で親や兄弟が 赤ちゃんに覆い被さって赤ちゃんが窒息した事例が121件、ベッドにはさまった例が394件ある。」と発表しました。詳細はこちら。
これを受けて、前出の ジェイムス・マッケーナ教授は「親が赤ちゃんとベッドを共有するか否かは、製品の安全問題とは異なる」と題して、 ベッド自体の構造や、親が覆い被さる場合の親の健康状態、同じベッドに寝ることの危険性と並んで赤ちゃんと ベッドを共有することの利点についても更に研究が必要だと 発表しました。詳細はこちら。
その後、アメリカ小児学会は、SIDSを予防するための乳児の睡眠環境に関するガイドラインを発表しています。2011年に発表された改訂ガイドラインには次のように書かれています。(以下、著者の概訳です。原文はこちら。)
「赤ちゃんを仰向けで寝かすこと(著者注:アメリカでは、『Back to sleep(眠るときは仰向けで)』というキャンペーンを続けています。)、赤ちゃんを適切な環境で寝かすこと(赤ちゃん用に設計された安全なベッドを使う。固いマットレスを使用する。柔らかい枕やおもちゃをおかない。 毛布やシーツ をピンと張った状態以外で使わない 。クリブバンパーを使わない。頭を覆うような寝間着を着せない。)、妊娠中および産後にたばこ・アルコールやドラッグを喫しない。
母乳育児はSIDSのリスクを下げる。完全母乳は最もSIDSの予防効果がある。」
添い寝については、今回のテーマなので、少し細かく訳してみます。
「 添い寝でSIDSを予防できるという十分な研究がなく、また添い寝するときの一部の危険因子(例えば親の疲れ)を排除できないため、アメリカ小児学会では添い寝を推奨しない。
親と同室で赤ちゃん専用ベッドに寝かせると、乳幼児突然死症候群(SIDS)の発生が半減し、窒息したりベッドとフレームの間にはさまることを予防できる。(筆者注:このガイドラインでは、赤ちゃんを親と同室で寝かせることを推奨しています。)
『親と同一ベッドで安全に添い寝するため』と称した商品(例えばコスリーパー)は、推奨しない。親のベッドで授乳するのはよいが、親が眠る前に赤ちゃん用のベッドにうつすこと。ソファーや肘掛け椅子は、SIDS発生率が特に高いため、親がそのまま眠りそうなときには、ソファーや肘掛け椅子で授乳しない。
次の場合、添い寝をするべきではない。
赤ちゃんが生後3ヶ月以下である。親が喫煙している、または母親が妊娠中喫煙していた。親が極度に疲労している。眠気を誘う薬やアルコールを摂取した。兄弟など親以外と同一ベッドで寝る。やわらかい表面(ウォーターベッドやソファ)ややわらかいもの(枕、思い毛布など)がおいてある。」
上記ガイドラインは、10ページにわたって書かれています。研究で危険因子と言われているものを羅列し、すべて排除するように書かれているような印象を受けました。 危険因子というのは、特定の疾患の発生に関係がある事象を指しますが、危険因子があるからといって必ず疾患が発生するとは限りません。
添い寝についても、「親の疲れといった危険因子を排除できないため推奨しない」と書かれています。では、添い寝をするときにSIDSの危険因子を減らすためのガイドラインはないのでしょうか。
前出のノートルダム大学マッケーナ教授は、『母と子の行動学的睡眠研究所』というサイトで、添い寝に関する科学的データや安全な添い寝のためのガイドラインを紹介しています。ガイドラインには、床にマットレスをおき、お父さん、お母さん、赤ちゃんの順に並んで眠っている絵が描かれ、次のような具体的なガイドラインが記されています。サイトはこちら。
• 赤ちゃんが健康な満期産であり受動喫煙していない。
• ベッドを共有する親全員が添い寝について理解、納得し、責任を負える。
• 母乳育児をしている。
• 赤ちゃんが仰向けで固いマットレスの上で寝る。頭は決して覆わない。
• 枕や柔らかいおもちゃなどを周りにおかない。
• やわらかい布やビーンバッグマットレスを使わない。
• ウォーターベッドを避ける。
• ソファーで寝ない。
• 哺乳瓶で授乳している赤ちゃんは別ベッドで寝る。
• 1歳以下の赤ちゃんは兄弟とベッドを共有しない。
• 薬やアルコールなどを喫して眠気を感じている親は同じベッドで寝ない。
• 母親の髪が特に長い場合、赤ちゃんの首に巻き付かないよう束ねて眠る。
• 肥満で赤ちゃんにどれだけ近いか分からない場合は、同じベッドで寝ない。
日本では、厚生労働省が1999年から毎年11月を「乳幼児突然死症候群」対策強化月間と定め小児学会などを通じて普及啓蒙活動を強化しています。11月を強化月間と定めたのは、12月以降の冬期に乳幼児突然死症候群(SIDS)が発生する傾向が高いためです。SIDSの発生リスクを下げるために、(1)あおむけ寝、(2)母乳哺育、(3)保護者等の禁煙 を呼びかけています。
2010年の強化月間呼びかけはこちら。
日本では、添い寝に関しては一切言及していません。
また、ボランティアグループ『NPO法人SIDS家族の会』は、SIDSやその他の病気、流産、死産などで赤ちゃんを亡くした両親を精神的な面から援助し、SIDSに関する情報提供をしています。SIDSの危険因子やSIDSを少なくするための記述もあります。ベッドの共有については、赤ちゃんと添い寝することがSIDSの危険因子となる研究もあるが、データからソファーでの死亡事例を差し引くと親のベッドに赤ちゃんを寝かせることは統計的には危険因子とならないと紹介しています。
サイトはこちら。
『母と子の行動学的睡眠研究所』にある添い寝のためのガイドラインの最後に、「すべての選択肢について考慮し、理解した上で、家族に最もあった方法を選ぶことをお勧めします」と書いてあります。お母さん、パートナー、兄弟それぞれの考え方や環境などにより、最善の方法は異なるでしょう。また、家族全員の睡眠時間が最も長くなるのが、その家族にあった睡眠環境だという考え方もあります。
皆様もいろいろな選択肢を知った上で、ご家族にあった寝かたをお試し下さい。皆様のご意見や経験談をお聞かせください。