ナパと並んでワイナリーで有名なカリフォルニア州ソノマ郡で、11月6日に母乳育児カンファレンス(Breastfeeding Conference)が開催されました。『新生児治療室(NICU)を経た乳児への母乳育児促進』、『ミレニアム世代(1980年から2000年に生まれた若者)への母乳育児支援』といった興味深い講演が続くなかで、特に印象に残ったのはダイアナ・ウェストさんによる『美容整形手術後の母乳育児』でした。手術の種類や方法がわかりやすいようにと手術前、手術中、手術後の写真をふんだんに取り入れたプレゼンテーションも興味深いものでした。今日は、講演で学んだこととその後調べたことを少しご紹介します。
2011年の日本での豊胸手術件数は、およそ5万2千件。アメリカでは2011年が28万4千件、2013年の年間施術数は豊胸手術が約29万件、胸の縮小手術は約4万件でした。統計によるとアメリカで2013年に豊胸手術を行った年齢別件数は40歳未満が20万件弱、つまり手術後に妊娠出産を経験する女性も多いことでしょう。(数値は、International Society of Aesthetic Plastic Surgery*2およびAmerican Society of Plastic Surgeons*1のサイトより引用)
一般的には、豊胸、縮小手術をした後も母乳育児ができることが多いですが、整形手術によって乳管や神経のどの部分がどれほど傷つき、手術からどれだけの年数が経過しているかによって母乳育児への影響の度合いが変わります。100%母乳だけで赤ちゃんの栄養が満たされる場合もありますし、母乳の供給量が足りずに人工乳を足さざるを得ない場合もあります。
母乳育児への影響を与える要因の一つに、手術時の切開場所があります。母乳育児に重要な役割を果たす『第4胸神経』と呼ばれる神経は、乳頭の外側やや下向きにあります。豊胸手術で乳房の下縁を切開してインプラントを入れたり腋窩(脇の下)からバッグを挿入して生理食塩水を注入する場合はこの第4胸神経に傷がつかない可能性が高くなります。一方、乳輪の下縁部分を切開する場合や、おへそからバッグを挿入する場合は、神経を傷つける可能性が高くなります。また、乳輪近くを切開すると、乳頭に複数ある母乳の出口が損傷を受けることがあります。母乳の出口が損傷を受けると、乳房内で作られた母乳を外に出すことができず、次第に母乳の量が減って赤ちゃんに十分な量の母乳を供給できなくなることがあります。
胸を縮小するための脂肪吸引(リポサクション)は、母乳育児に影響が少ないと言われています。胸を切開し皮膚や脂肪を切除する縮小手術の場合は、切開する場所が第4胸神経に影響が少ない乳房の上側または内側の方が乳房の下側または外側を切開する場合に比べて母乳育児への影響が少なくなります。
損傷した胸神経は、時間の経過とともに再生します。再生速度は1ヶ月で約1mm、重度の損傷でも約5年で回復すると言われていますので、手術からの経過年数が長いほど母乳育児への影響が少なくなります。神経にくわえて、母乳の通り道である乳腺の損傷も母乳育児に影響がでます。月経、妊娠、授乳中に乳腺は発達しますので、こちらも時間とともに再開通が期待できます。授乳すればするほど乳腺が発達するため、一人目のときにどんどん授乳すると次の出産時に母乳の量が増えることもあります。
整形手術と母乳育児の関係について気になる方は、手術方法、手術時期について納得いくまで調査なさってください。今回講演をしたダイアナウェストさん(ご自身も胸の縮小手術を経験されています)が作成した『乳房および乳頭手術後の母乳育児(Breastfeeding After Breast and Nipple Surgeries)』というウェブサイト(*3 英語)にも多くの情報がありますし、フォーラムで経験者の話を聞くこともできます。
最後に。。専門用語など誤りがあるかもしれません。お気づきの方はどうぞご指摘下さい。乳腺の発達状態や手術の手法など個人差があり、母乳育児への影響の度合いは一概に言えません。。あくまで参考情報としてご理解頂ければ幸いです。
(参考ウェブサイト)
*1 American Society of Plastic Surgeons
*2 国際美容外科学会(国別美容整形外科手術手法(2011年))
*3 Breastfeeding After Breast and Nipple Surgeries
2011年の日本での豊胸手術件数は、およそ5万2千件。アメリカでは2011年が28万4千件、2013年の年間施術数は豊胸手術が約29万件、胸の縮小手術は約4万件でした。統計によるとアメリカで2013年に豊胸手術を行った年齢別件数は40歳未満が20万件弱、つまり手術後に妊娠出産を経験する女性も多いことでしょう。(数値は、International Society of Aesthetic Plastic Surgery*2およびAmerican Society of Plastic Surgeons*1のサイトより引用)
一般的には、豊胸、縮小手術をした後も母乳育児ができることが多いですが、整形手術によって乳管や神経のどの部分がどれほど傷つき、手術からどれだけの年数が経過しているかによって母乳育児への影響の度合いが変わります。100%母乳だけで赤ちゃんの栄養が満たされる場合もありますし、母乳の供給量が足りずに人工乳を足さざるを得ない場合もあります。
母乳育児への影響を与える要因の一つに、手術時の切開場所があります。母乳育児に重要な役割を果たす『第4胸神経』と呼ばれる神経は、乳頭の外側やや下向きにあります。豊胸手術で乳房の下縁を切開してインプラントを入れたり腋窩(脇の下)からバッグを挿入して生理食塩水を注入する場合はこの第4胸神経に傷がつかない可能性が高くなります。一方、乳輪の下縁部分を切開する場合や、おへそからバッグを挿入する場合は、神経を傷つける可能性が高くなります。また、乳輪近くを切開すると、乳頭に複数ある母乳の出口が損傷を受けることがあります。母乳の出口が損傷を受けると、乳房内で作られた母乳を外に出すことができず、次第に母乳の量が減って赤ちゃんに十分な量の母乳を供給できなくなることがあります。
胸を縮小するための脂肪吸引(リポサクション)は、母乳育児に影響が少ないと言われています。胸を切開し皮膚や脂肪を切除する縮小手術の場合は、切開する場所が第4胸神経に影響が少ない乳房の上側または内側の方が乳房の下側または外側を切開する場合に比べて母乳育児への影響が少なくなります。
損傷した胸神経は、時間の経過とともに再生します。再生速度は1ヶ月で約1mm、重度の損傷でも約5年で回復すると言われていますので、手術からの経過年数が長いほど母乳育児への影響が少なくなります。神経にくわえて、母乳の通り道である乳腺の損傷も母乳育児に影響がでます。月経、妊娠、授乳中に乳腺は発達しますので、こちらも時間とともに再開通が期待できます。授乳すればするほど乳腺が発達するため、一人目のときにどんどん授乳すると次の出産時に母乳の量が増えることもあります。
整形手術と母乳育児の関係について気になる方は、手術方法、手術時期について納得いくまで調査なさってください。今回講演をしたダイアナウェストさん(ご自身も胸の縮小手術を経験されています)が作成した『乳房および乳頭手術後の母乳育児(Breastfeeding After Breast and Nipple Surgeries)』というウェブサイト(*3 英語)にも多くの情報がありますし、フォーラムで経験者の話を聞くこともできます。
最後に。。専門用語など誤りがあるかもしれません。お気づきの方はどうぞご指摘下さい。乳腺の発達状態や手術の手法など個人差があり、母乳育児への影響の度合いは一概に言えません。。あくまで参考情報としてご理解頂ければ幸いです。
(参考ウェブサイト)
*1 American Society of Plastic Surgeons
*2 国際美容外科学会(国別美容整形外科手術手法(2011年))
*3 Breastfeeding After Breast and Nipple Surgeries